体育館12:25~それぞれのみる景色~

 日差しを浴び、楽しそうに笑う彼女を見て、思う。


 くるくるとよく表情が変わるな、って。


 表情の変化に乏しい俺とは、まるで真逆だ。


 付き合いはじめてから二度目のデート。


 俺は今日、どれだけ新しい彼女を知れるのだろう。


 俺の知らない彼女の顔は、あといくつあるんだろう。


 彼女のことを、もっと知りたいと思う。


 高校時代に俺が見たのは、彼女の笑顔と赤く染まった顔。


 それから、こっちまで泣きそうになるほどの、儚い泣き顔だけだった。


 泣かせたことの方が、数えれば多かったんじゃないかと思ったりもする。


 実際はそんなことないんだろうけど、こんなふうに思うのは多分、彼女の泣き顔が俺の中に鮮明に残っているからなんだろう。


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