体育館12:25~それぞれのみる景色~
―――日が沈みかけてきた。
真っ青だった海はオレンジがかり、綺麗に波打っている。
その辺の流木にふたりで腰かけ、姿を消そうとする夕日を静かに見つめる。
今日は、楽しかった。
ひとつひとつの出来事を思い返して、ひとり、笑う。
着替えたあの後、泳ぐことを楽しみにしていた彼女だったからもちろん海に入るものだと思っていたけど。
「じ、実は、カナヅチなの……」
恥ずかしそうにそう告げた彼女。
どうやら彼女は泳げなかったらしい。
そこでひとつ、知らなかった彼女を知れた。
海に入れないから、水着を着た意味なんてほとんどなかったかもしれない。
だけど、砂浜でこれまたガラにもなく砂のお城、なんてのをふたりで作ったりして。
あとは海の家で一緒にかき氷を食べたり、綺麗な貝殻を見つけて喜ぶ彼女をこっそり写真におさめたり。
波打ち際で冷たい水の感触や、足の裏をくすぐる波にさらわれていく砂の感触を楽しんだり。
彼女の水着姿は拝めなかったけれど、存分に楽しんだ。
好きな子と一緒なら、何をしても、どこにいても楽しいんだなとか、思った。