体育館12:25~それぞれのみる景色~

 今日知った、彼女のこと。


 それをひとつずつ頭の中で繰り返し唱え、忘れないように刻み込む。


 泳げないこと、意外と不器用な面があること(砂のお城を破壊した)。


 かき氷はいちご味が好きだとか、飲み物は炭酸が好きだとか。


 どれも些細な情報にすぎない。


 まだまだたくさん知らないことがあるだろうけど、今日はいろんな彼女の顔も見れたし、満足以外の言葉は出て来ない。


 彼女の思い描いていたデートをできているのかは正直わからないけれど、終始笑っていた彼女だから、きっと大丈夫だ。


 上を向けば、視界全部が空になる。


 こうして上を向くのはいつぶりだろう。


 そんなふうに思う。


 いつだったか聞いた、海が青い理由。


 その答えは乙女チックなものだったけど、こんな時だからこそ、それが頭に浮かんだ。


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