体育館12:25~それぞれのみる景色~
俺の為に努力をする姿を知った。
どんなことにも真っ直ぐ向き合う彼女を知った。
俺に染められていると言った彼女は、きっと知らない。
俺も、彼女色に染まっているっていうこと。
空を見ると浮かぶ彼女の顔。
一番に浮かぶのは、優しく微笑む笑い顔。
いつだって、隣りにいなくたって、俺のみる景色の中に彼女はいる。
「恭也くん、大好きだよ」
彼女は小さく小さく、呟いた。
……ああ、彼女とはもっとゆっくりとふたりで歩んでいきたいのに。
予定ではもっと先だったのに。
今日は朝から余裕がなかった。
自分の中にわきあがる、彼女への愛しさに蓋なんかできなくて。
夕日に染められた俺たちの姿は、ふわりと一瞬だけ、重なった。