体育館12:25~それぞれのみる景色~
電車を乗り継いで2時間半の距離は、近いようでとても遠い。
今までは体育館に行けば彼の姿を見ることができたけど、もうそこに行っても彼の姿を見ることはできない。
それはすごく寂しい。
付き合った瞬間に離ればなれになったのも悲しいけど。
……でも、私にはこれがあるから。
ブレザーの胸ポケットに入った、第2ボタン。
卒業式の日、体育館のギャラリーで佐伯先輩からもらった大事なもの。
制服越しにそこに触れると、なんだか落ち着く。
いつでも持ち歩いているんだ。
そうすると、佐伯先輩の近くにいるって、そんな気がするから。
会いたいときに会えないのは、不安にもなるけど。
あの日、佐伯先輩に気持ちを伝えることができて、佐伯先輩からも『好き』だと言ってもらえて。
だから、私は頑張ることができる。
大学でも佐伯先輩はモテまくっているみたいだから、正直不安で不安でしょうがない。
だけど、佐伯先輩は忙しいだろうにメールをしてくれたり、夜に電話をかけてきてくれたりと、いろんなことで私の不安をなくそうとしてくれている。
それが嬉しくて、佐伯先輩の気持ちが伝わってくるみたいで、私はいつも励まされている。
佐伯先輩の姿を学校で見ることがなくなっても、メールや電話でしか話せなくても、先輩を好きだという気持ちは全然色あせなくて。
むしろ、どんどん先輩のことを好きになっていく。