体育館12:25~それぞれのみる景色~

 彼の顔色を窺うようにして見てみると、そこには顔を真っ赤にしている姿があって。


 初めは怒っているのかもと思ったんだけど、ぶっきらぼうに「なに?」と返事をした後、彼ははにかんだような笑みを見せてくれた。


 そんな姿を見て、思う。


 ああ、私はこの人のことが大好きだ、って。


 会えなかった間にも、考えるのは佐伯先輩のことばかりで。


 女の子に言い寄られたりしてないか、飽きられちゃったりしないか、すごくいろいろ不安で。


 だけど、私が名前を呼んだだけで顔を赤くする彼に、私はとても温かい気持ちになった。


 不安だって、一気になくなってしまった。


 好かれているんだって、実感できた。


 そんな彼に、伝えたい。


「恭也、くん。好き、です……」


 会えない2か月の間、ずっと言いたかった言葉。


 恥ずかしいけど、どうしても言いたかったこと。


 言った直後、顔が真っ赤になっていくのがわかった。


 身体中が熱くなって、火照ってくる。


 目の前の彼の顔を見ることもできずに、うつむくしかない。


 彼は今、どんな顔をしているんだろう……。



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