体育館12:25~それぞれのみる景色~
「あの、どこ行くんですか……っ」
私の手を掴んだまま、ずんずん歩みを進める彼。
足の長さに差がある上に早歩きだから、私は必然と小走りになって息が上がる。
私の声に反応を示さない彼はそのまま歩き続け、気がつけば公園に来ていた。
そこで、やっと彼は歩くのを止めた。
「はあ……っ、急にどうしたんですか」
息を整えながらそう言うと、くるりと振り向いた彼。
何かに耐えるかのように、唇をきゅっと結んだ顔で、私をじっと見ている。
「えっと、どうしたんですか?」
私がそう聞くと、彼は気まずそうな顔をしながらも口を開いた。
「……七種の、メール。『手出す』って、どこまでだと思う?」
「え、あ……っ!」
彼は言うが早いか、私のことを、ぎゅっと抱きしめた。
優しくたくましい腕の中に、私はすっぽりと包みこまれている。
いきなりのことでびっくりしたし、ドキドキするけど。
2か月ぶりに触れた体温は驚くほど心地よくて。
私も、彼の大きくて広い背中に腕を回した。