体育館12:25~それぞれのみる景色~
親友と、好きなヤツ。
【慶Side】
卒業式が終わった翌日、朝7時。
いつもと変わらず店番をしている俺。
最近では早起きも苦じゃなくなってきた。
俺に店を継がせることが両親の夢。
そしていつからか、それが俺の夢になっていた。
……大体、勉強とかガラじゃねえし。
働くってのも、ガラじゃねえけど。
花屋の日常ってのは単調で、力仕事が多い。
朝市で親父が買い付けた花の処理して、水替えして。
鉢植えなんかの枯れた花弁や葉を取り除いて。
汚くなった地面をきれいにほうきで掃く。
……ちなみに、フラワーアレンジメントってやつは、まだ勉強中だ。
準備が一通り終わって一息ついた、そんな平和な午前8時半。
「宮下さんは、もう俺のだから」
店を開く30分前。
従業員出入り口から入ってきて、俺の目の前にいきなり現れてそう言ったのはコイツ、恭也だった。
しばらく口もきいていなかったし、メールもエラーで戻ってくる、電話も出てくれない。
おまけに学校で話しかけてもフルシカト。
バイトだって来なくなって、おふくろに聞けば「辞めた」の一言で。
そんな恭也がここまで来て、何を言うかと思ったらそんなことだった。