体育館12:25~それぞれのみる景色~

 恭也がここを離れるのは知ってた。


 校内で目立つコイツの噂なんて、聞きたくなくたって耳にくらい入る。


 何かと一緒にいて、コイツの過去も知ってて。


 俺は恭也と親友と呼べる関係だと言い切れる。


 だけど、俺が約束を破ったことで、長い間にわたって培ってきたその関係は脆くも崩れた。


 ……亜希に告白した日。


 終わったのは、あの日だ。


 あれは、俺にとって最後の足掻きだったというより、せめて卒業するまでには亜希のことを思い出にしたいと思っての行動で。


 だって、俺は知ってた。


 ―――亜希と恭也がお互いに好きあってることを、ずっと。


 バカみてえだと思った。


 なんで、よりによってこいつらなんだよって何度も思った。


 何度も何度も悔しい思いをして。


 俺を“慶ちゃん先輩”なんてバカみたいなあだ名で呼ぶ亜希を、何度も諦めようと思った。


 だけど、ダメだった。


 どうしても、諦められなかったんだ。


 それでも、想い合う2人をぶっ壊そうなんて思えなかったのも事実だ。
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