体育館12:25~それぞれのみる景色~

 周りの女が俺や恭也の名前を叫びながら歓声を上げる中、亜希はぎゅっと柵を握りしめてじっと見ているだけで、俺や恭也の名前を呼ぶこともしなかった。


 純粋そうで無垢な瞳。


 そんな顔でこっちを見下ろすから、それほどバスケが好きなのかと思った。


 それを見て、ああ、俺の周りにいる女とははるかに違うなって思った。


 そんな亜希に好かれたいって思った。


 小学生の頃、まだ俺が汚れなんて知らなかったとき。


 クラスの子を好きになって、その子を見るだけで嬉しくなったりドキドキした。


 その時と似た感情が、亜希を見ると胸を覆い尽くした。


 一時の気の迷いだって自分に言い聞かせてはみたけど、日を追うごとに亜希に興味を持って行った。


 今日はギャラリーにいるか、どこかで話せないかなんて考えて。


 バカみたいだけど、そんなことばっか考えて。


 あれだけひどかった女遊びも、いつの間にかやめていた。


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