体育館12:25~それぞれのみる景色~

 俺が亜希を好きになった理由なんて、ほんの少しの興味と過大評価からだった。


 ほかの女とは違うなんて考えて、勝手に気になっただけの話だ。


 だって、ただバスケが好きってだけで、毎日体育館にわざわざ足を運ぶか?


 きっと、そんな理由でギャラリーに集まる女子なんかいない。


 そこまで考えて、バカな俺でも気が付いた。


 なんでこうも亜希が毎日バスケを見に来るのかって理由。


 ただ純粋にバスケを見に来てるだけじゃないってこと。


 もしかしたら俺を見に来てるのか、とも考えたことがあった。


 それが本当だったらどれだけ喜んだのかはわからない。


 バカな俺は、亜希の目に映るのが俺だと信じて疑わなかったんだ。


 ……でも、気づいた。


 頻繁に亜希の方を見上げるけど、一度だって目なんか合わなかったっていうことに。


 このコートには俺のほかにもう1人、これだけの女が集まる原因の存在がいるってことに。


 それに気づいたのは、いつだっただろう。


 亜希の視線がどこに向けられているのかを目で追って、再三確かめて。


 そして、冷や汗が伝ったあの瞬間を忘れることはないだろう。


 ……亜希の視線の先には、いつだって恭也がいた。


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