体育館12:25~それぞれのみる景色~
初めて間近で見た亜希はやっぱり小さくて、本当に可愛かった。
好きだという感情のフィルターなしで見ても可愛いだろう。
特別な感情を抱いている今、俺の目に映るこいつは何割増しで見えてるんだとか、冷静にバカっぽいことを考えてみたけど。
なんつーか、ダメだった。
初めて聞くその声に惹かれて、初めてその目に俺が映ったことが嬉しくて。
無意識に上目づかいで見られた時なんかは、自分でもわかるくらいに顔が真っ赤になるのがわかるくらいで。
亜希の友達が出て行ったあとなんて、本当に緊張しまくってダメだった。
見た目がイカついってよく言われる俺の中身がこんなんだと知られたら、さぞ幻滅されることだろう。
でも、コートにいる俺と、ギャラリーにいる亜希。
近いようで遠い場所にいたこいつが目の前にいるってことに、本気で内心喜んだ。
本当にこいつはほかの女と同じなのか、この期に及んでも考えて。
そして、やっぱり好きだと思った。
実際に目の前で動いて話して、良く変わる表情を見て。
恭也じゃなくて、俺を好きになってくんねえかなと思った。
亜希が恭也を見つめているなんて俺の勘違いかもしれないって、思いたかった。
でも、会って話せただけで嬉しいと思ったんだ。
それだけで十分かもな、とも思った。