体育館12:25~それぞれのみる景色~

 まあ、でも。


 恭也の言葉ではっきりと2人がくっついたことを知らされたわけで、多少は心が痛んだけど。


 俺に対して嫌味や忠告なんかを言ってくるくらいだから、きっとまだ俺が亜希を好きだと思ってるんだろう。


 そんな目で見なくても、俺はとっくに手を引いてんだよ。


 そう思いを込めて恭也を見れば、なぜか気まずそうに目をそらされた。


「……知ってる。全部聞いたから」


 重々しく口を開いた恭也から飛び出たその言葉に、俺は目を見開くしかなかった。


 だって、知ってるって誰から聞いたのか。


 亜希とくっついたくらいだから、亜希に聞いたのか。


 でも、そんなことどうでもいい。


 それを知って、何をしに俺のところに来たのか。


 誤解が解けたにしたって、俺が約束やぶって告白した事実は変わらないのに。


「なんつーか、慶のことはまだ怒ってるけど。自分からあんなこと吹っかけといて、告白するとか何様だよとか今でも思ってる。だけど……」


 そこまで言って、恭也は一度言葉を区切り、俺の方を静かに見据えた。


「……俺も、お前に悪いことしたから。謝りに来た」


「は……?」


 そう言う恭也の視線は、相変わらず俺にまっすぐ向けられていて、俺もそらすことができなかった。



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