体育館12:25~それぞれのみる景色~

「悪かった」


 そうぶっきらぼうに言う恭也に、俺は動揺した。


 だって、コイツは何に対して謝ってんだ?


「おい……」


「ちなみに、宮下さんと付き合ったことで謝ってるわけじゃないから」


 聞こうとした瞬間、俺の考えを読み取ったかのように言葉を遮られた。


 おう、そうだろう。


 それで謝られてたんだとしたら、俺が悪くてもさすがにキレる。


 第一、恭也はそういうことで謝ったりはしないから。


 ……じゃあ、コイツは何に対して謝ってんだよって話だ。


「慶の話を聞こうとしなかったこと、無視したこともそうだけど。……いろいろ、お前にキツイ思いさせたと思うから。……悪かった」


 そう言って、頭を下げた恭也。


 最後の言葉で、コイツが何を言いたいのかはわかった。


 確かにキツかったからな、精神的に。


 亜希にフラれてんのに、付き合ってるって勘違いされたこと。


 弁解すら聞いてもらえなかったこと。


 シカトも。


 今まで一緒にいた時間が崩れ去ったような、絶望的な感覚を味わって。


 ……確かに、苦しかった。


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