体育館12:25~それぞれのみる景色~
亜希が恭也を好きなこと、恭也が亜希を好きなこと。
その事実もぶっちゃけどうしようもなくキツかったし、当人同士それに気づかないこと、俺に狙わせる隙を無意識に作っていたことも、相当キツくて苦しいものだった。
「だけど、それは俺が……!」
勝手に、亜希を好きになっただけで。
そいつがたまたま、恭也を好きで。
お互い想い合ってるってとこに、俺が割り込んだだけだ。
無視や弁解を聞いてもらえなかったことも、俺のせいだ。
コイツが謝ることなんて、何もねえんだよ。
言葉に詰まる俺に、儚げに微笑む恭也。
いつから、こんな表情をするようになったんだろうな。
それは、絶対に、亜希の影響だろうけど。
「……まあ、俺だって悪かったんだよ。もちろん慶も悪すぎるけど。……だから、これでおあいこな」
そう言って、笑った恭也。
握り拳をこっちに突き出して、俺の反応を待っている。
「……俺も、悪かった」
そう言って、恭也の拳に、自分の拳をこつんとぶつけた。
昔からの、俺たちの仲直りのあいさつだ。