体育館12:25~それぞれのみる景色~
お互い笑って、なんだか照れ臭くなった。
だけど、嬉しい。
やっぱり恭也とは、これからも親友でいたいって思った。
でっかい心で、繊細さも併せ持つけど、誰よりもコイツは亜希を大事にするだろう。
その大きな手で、幸せにするんだろう。
そんなことを思いながら、握りしめた拳を下ろした。
「……今日、これから行くのか」
「さっきも言った」
「……亜希には会って行かねえのか」
「宮下さん、今日は卒業式の片づけで学校だから。つーか、呼び捨てうざいんだけど」
「はっ! 恭也なんか“佐伯先輩”なんて呼ばれてるもんな? 俺は“慶ちゃん先輩”だし?」
「……ほんとうざい。まあ、宮下さんに触れるのは俺だけだし。俺の彼女だし」
そんな毒を含んだやりとりを、前みたいにできることが楽しい。
それに、もう傷つかない。
世界で1番可愛い後輩と、世界で1番大切な親友が結ばれたんだから。
俺はただ、祝ってやればいいだけだ。
「オメデト」
まだ、心から素直に祝えない。
でも、亜希の幸せそうな顔が思い浮かんで、自然とそんな言葉が口からもれた。
恭也は驚いたみたいだったけど、ただ「ありがとう」と口にした。