体育館12:25~それぞれのみる景色~
俺が高校生活で手に入れたものなんて、片手で数えられるくらいしかない。
でも、手に入れた数少ないそれは、俺にとってかけがえのない大切なものだ。
それをくれた恭也と亜希。
コイツらは、高校生活のキレイな思い出だ。
「じゃ、そろそろ俺行くから。仕事、頑張れ。それと……」
「はあ!?」
去り際に、恭也が言った一言。
『俺がいいって言うまで、宮下さんに連絡とるの禁止。』
「ちょっ、おい、解決したんだから連絡くらい……!」
「慶ー!! お店開けるわよー! 準備終わってるのー?」
「げっ!」
時間が過ぎるのは早くて、おふくろに奥からそう叫ばれた。
くそ、こんな時にタイミング悪すぎんだよっ!
「ふっ、じゃあ、そういうことだから。またな」
悪態をつく俺に笑って、背を向けて歩き出した恭也。
「おい! まだ話は終わって……!」
終わってない、そう言いかけたけど、やめた。