体育館12:25~それぞれのみる景色~
佐伯センパイのことでけじめをつけるために切ったという髪。
その亜希の短くなった髪は、今は少しのびたみたいだ。
首元にかかる襟足の部分がはねているのが、なんだかかわいいなと思う。
まあ、亜希はどんな髪型でも似合うし、何をしても可愛いんだけどさ。
亜希の髪は夕日を浴びて茶色く光っている。
あの頃より格段にキレイになった亜希に、思わず見入った。
こんなに近くで顔を見ることなんてなかなかないから、これでもかというくらいにじっと見つめた。
ああ、困ってる困ってる。
眉を垂らして、小首をかしげるこの姿。
佐伯センパイが見たら悶えるだろうな。
つーか、こんな状況見られたら、確実に怒られる。
だって、佐伯センパイ、亜希にベタ惚れみたいだし。
なかなかわかりにくいとこあるけど。
「ちょっと、みーくん? 帰らないの?」
右耳に髪の毛をかけながら言う亜希。
何も言わない俺に少し苛立っているのか、語気が荒い。
うん、怒った顔も可愛い。
というより、これは拗ねてる顔だな。