体育館12:25~それぞれのみる景色~

 飽きもせずほっぺをいじる俺に、亜希は口を開いた。


「拗ねてなんかないけどっ。みーくんが無視するからいけないんだよっ……」


 亜希はそう言って目をそらし、ほっぺを赤く染めた。


 心臓がドキっと、小さく音を立てた。


 あー、もう何この子。


 本当に天然小悪魔だよな。


 俺が相手だからいいけど、ほかの男にやってたら間違いなく“ナニカ”が起きる。


 こんな顔、佐伯センパイと2人きりのときにやってみろよ。


 ほぼ確実に、襲われるはず。


 いや、あの人は段階とか結構考えてそうだし、亜希の嫌がることはしないか。


 ……あー、想像したらなんかショックだわ。


 再会してすぐに失恋決定したわけだけど、長年の思いはそう簡単には消えてくれないらしい。


 亜希に彼氏が出来ても諦められないなんて、本気で不毛な恋だ。


 亜希が佐伯センパイを好きなことなんてすぐにわかったし、佐伯センパイも亜希に好感持ってるのだって気づいたけど。


 お互いそれに気づいてないし、だからこそ最初は奪ってやるつもりだった。


 だけど、何度も泣いて、それでも頑張る亜希を困らせることなんてできなかった。


 頼れるいい幼なじみ。


 そのポジションも案外悪くないかもなって言い聞かせてきた。


 けど、やっぱり好きだなと思う。

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