体育館12:25~それぞれのみる景色~

 それを話すと、彼女はとても驚いたみたいだった。


 目玉が落ちてしまうんじゃないかってくらいに、大きく目を見開いて。


 そしてまた、泣き出した。


 “3年前からずっと、惹かれてたんだ”


 俺の、長い間胸に秘めていた思いを聞いた直後に。


 ……女は苦手だった。


 母親を知らないし、愛も知らない。


 愛された記憶もなければ、愛した記憶もなかった。


 母に会いたいと願いながらも、憎んでいた。


 女は信じられないって思い続けて距離を置いた。


 おばさんからは虐待を受け。


 何度、その過去を手放したいと思っただろう。


 そんな俺の前に現れた彼女を、俺を捨てた母親と同じ、女という生物の彼女を。


 なぜ、好きになったんだろう。


 宮下さんに惹かれたあの瞬間を、“運命”と呼ばずになんと呼ぶのだろう。


 そして、こんな俺を好きだと言ってくれる目の前の彼女。


 この出会いは、奇跡と呼ばずにはいられない。


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