体育館12:25~それぞれのみる景色~
やっと結ばれた2人。
上手くいっている2人。
今俺が気持ちを伝えることで亜希が動揺して悩んで、佐伯センパイとの仲が険悪になって欲しくはない。
幸せを願いたいし、応援したい。
でも、長年大事に温めてきたこの想いを、知ってほしいとも思う。
それは、いけないことなんだろうか……。
あーあ、情けない。
傍らを見れば、楽しそうに話す亜希がいる。
佐伯センパイに見えるはずないのに、身振り手振りを加えて話す姿が可愛い。
……このくらい、いいよな?
おもむろに取り出したケータイ。
電話に夢中になっている亜希は、俺がケータイをそっちに向けていることなんかに気づいていない。
タイミングを見計らって、押したボタン。
瞬間、パシャリと響くシャッター音。
……よし、キレイに撮れた。
しっかりと保存できたことを確認してケータイを閉じる。
写真を撮ったこと、亜希は気づいていないみたいだ。