体育館12:25~それぞれのみる景色~
なんとなくこの場に居ずらくなって、大きく息を吐き出した。
嬉しそうに話す亜希の邪魔にならないようにと、席を立つ。
……なんていうか、戦意喪失?
何がきっかけかはわからないけど、そんな気持ちになった。
いや、理由なんてわかってる。
堂々と写真を撮れないこと。
1番近くにいるのが俺じゃないこと。
亜希の1番可愛い笑顔を、俺がさせてあげられないこと。
俺ができないこと全部できるのが、佐伯センパイだってこと。
変えることのできないその事実に、メンタルを削られたから。
カンペキに、いろいろ遅すぎる。
やっぱヘタレだな、俺。
……悔しいな、コレ。
「あれ、みーくん? どこか行くの?」
立ち上がった瞬間、かかった声。
亜希の手元を見てみれば、閉じられたケータイが握られていた。
どうやら、電話は終わったらしい。
きょとんと首を傾げる亜希に苦笑いを浮かべてカバンを持ち、「帰るかー」と声をかける。
佐伯センパイに対するちょっとの優越感と、亜希に対する大きな罪悪感。
その原因が入っている俺のケータイ。
それを壊れるくらい、きつく握り締めた。