体育館12:25~それぞれのみる景色~

 帰り道、並んで歩く亜希に問いかける。


「愛しい彼氏からの電話はどうでしたかー?」


 なんて、自分で言った言葉に傷ついた。


 本気でアホくさい。


 亜希ははにかんで、頬を染めるだけだった。


 そんな姿に俺が傷ついているなんて、佐伯センパイに夢中な亜希は気づきもしないんだろうけど。


 落ち込む、わりと本気で落ち込む。


 そんな俺の心情なんか露程も知らない亜希は、思い出したように言った。


「そういえば、みーくん。電話の前に何か言いかけてなかった?」


 ……それを今言うかな、この子は本当に。


 ずるいなあ。


「あはは、なんでもないよ。つーか、忘れちゃった」


 力なく笑う。


 俺はもう、こう言うしかない。


 だって、なんだか、もういいかなって思ったから。


 それに、どうにもならないことだし。


 俺がそう言って笑えば、「何それ~」と亜希も笑う。


 ……これでいいと思う。




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