体育館12:25~それぞれのみる景色~

 俺は、本当に馬鹿かもしれない。


 好きだけど、幸せなんか願えなくて。


 だけど、幸せになってほしい。


 ……違う、俺がこの手で幸せにしたかった。


 渡したくない、渡したくなかった。


 伝えたい、そして、そばにいて欲しい。


 幼なじみとしてじゃなく、恋人として。


 だけど、遅かった。


 壊して、悩ませて、泣かせるのはイヤだ。


 じゃあ、どうする?


 俺が何も言わずにいれば、済むことか?


 そうしたら俺のこの気持ちはいつか消える?


 今更になって後悔が襲う。


 なんで、2人がくっついちゃう前に言わなかったんだろう。


 なんで、あの時に応援するなんてバカな気を起こしたんだろう。


 ダメ元でも、言っていればきっとこんなに苦しくなかった。


 全部、俺が臆病だったせいだ。


 『いい幼なじみ』を保つための、少しの妥協や我慢。


 本当は、怖かっただけだ。


 亜希に告ってフラれて、幼なじみですらいられなくなったときのことを考えて、本当は怖くなっただけなのかもしれない。


 1番近くにいて笑っていたいくせに、特別になりたいくせに、いい幼なじみでいようとするって、どんな矛盾だよ。


 それが本音のくせに。


 俺のバカ……。


 だから、完敗なんだって。





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