体育館12:25~それぞれのみる景色~

 ―――俺には、幼なじみがひとりいる。


 小さくて、可愛くて、守ってあげたくなるような女の子。


 俺を“みーくん”と呼び慕ってくる、笑顔が可愛い子。


 その子は俺の、初恋だ。


 彼女はモテる。


 本当にすごくモテる。


 だけど、その子には大好きな恋人がいる。


 そして、彼女の恋人も、彼女を溺愛している。


 まさに、お似合いのカップル。


 俺は、失恋した。


 10年以上もの片想いは、気持ちを告げることなく静かに幕をとじた。


 5歳の時にした約束、彼女がそれを覚えているのかも確かめられないまま。


 初恋は、叶わなかった。


 たくさんの後悔、それに伴う胸の痛みに、あと何日悩まされるだろうか。


 果てしない気がする。


 薄暗い中、街灯が照らす駅までの道をゆっくり歩いてきたけれど、もう目の前は駅。


 会話もほとんどなく、2人でホームに降り立った。


『まもなく、ホームに電車が到着します。黄色い線の内側に―――……』


 もうすぐ、電車が来る。

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