体育館12:25~それぞれのみる景色~
……佐伯センパイ、亜希のことはこれからずっとあなたに任せます。
恋人っていう俺がずっとほしかったポジション、あなたにあげます。
その代わり、“良い幼なじみ”のポジションは、これからもずっと俺だけのものにさせてください。
ケータイを開いて、メール作成画面を開く。
シンプルな文面。
それに、画像を添付。
宛先は、佐伯センパイ。
……さて、このメールを見た佐伯センパイはどんな反応をするだろう。
『俺から佐伯センパイにプレゼント!』
たった1行の本文に、添付したのはさっき撮った写真。
佐伯センパイとつながったケータイを耳に当て、嬉しそうに目を細めて笑う亜希の顔。
メールがちゃんと送信されていることを確認して、自分の画像フォルダに入っていた亜希の写真を、消去した。
もったいないなとも思ったけど、未練はなかった。
……何度も言いますが、俺の初恋は、想いを告げることなく終わりを迎えました。
だけど、やっぱりこのポジションもおいしいんじゃないかなと思う。
幼なじみの俺しか見ることのできない顔が、きっとあるはず。
ニヤけた俺、ケータイメールの受信音。
直後に着信を知らせた亜希のケータイ。
そのどちらも、きっと相手は佐伯センパイ。
センパイの忙しないその行動に、なんだかおかしくなって、笑った。
そんな穏やかな、恋の終わりの日。
【end】