体育館12:25~それぞれのみる景色~

 アタシは、自分の望みを叶えた。


 あの時叶わなかった理想の自分を取り戻すことができた。


 堂々と恭也と慶の隣りに立てるくらいの美貌は手に入れたし、それに伴って、アタシに今まで見向きもしなかった人達が振り返る。


 人に囲まれた生活。 


 前までのアタシにとって当たり前だった生活が、戻ってきたはずだった。


 それなのに、心にあいた穴は埋まるどころか広がるばかりで、満たされなかった。


 恭也と慶、アタシの理想を全て持つ2人の隣りにまではいけたのに、そこからは進めなかった。


 アタシの理想の恭也と慶。


 その2人の在り方。


 関係や、空気や、彼らの全てが憧れで、同時に嫉妬もしていた。


 ……アタシは、恋愛感情として2人が好きだったわけじゃなかった。


 そうありたかったアタシの理想の全てが、彼らの間にあったからこそ、アタシは2人に近づいたんだ。


 この人たちといれば、アタシの理想が手に入るって思い違いをしていたから。


 アタシの理想。


 それは……。

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