体育館12:25~それぞれのみる景色~

 宮下ちゃんのことが許せなかった。


 簡単にこの2人を揺るがす存在だったから。


 理想に亀裂を入れかねない存在だったから。


 だけど、同時に、彼女がすごく羨ましかった。


 簡単に2人に近づいて、仲良くなって、その輪の中に馴染んでしまった彼女が妬ましくて。


 友達だって多くて、欠点なんて見当たらない。


 アタシが手に入れられなかったものを、どんどん奪っていく。


 嫌いだった、怖かった。


 彼女に抱いた一番大きな気持ちは、羨ましさと妬ましさ。


 だけど、気づいたんだ。


「ねえ、サエちゃん。サエちゃんはさ、損してるよね」


 卒業式の終わり、人気のない階段に座り込んで、隣りにいる子が言った。


 言葉の続きを待ったのに、それ以上喋る気配を見せない。


 それに、こうして会話を交わしたのは久しぶりな気がする。


「あのさ」


 アタシが話しかければ、真っ直ぐな瞳がアタシを見つめる。


 続きの言葉が出てこない。


 どうしてだろう。


 なんだかね、泣きたいんだよ。
 


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