体育館12:25~それぞれのみる景色~
亜希は彼氏のことになると、普段のポジティブ思考から考えられないほど弱気になるし、すぐに落ち込む。
2人が付き合ったのは先輩の卒業式。
付き合った途端の遠距離恋愛だから、彼女は寂しいのかしょんぼりと肩を落としているのを度々見かける。
でも、幸せなんだろうなって、見ていてよくわかる。
だって、ほら。
「ねえ、見てよ涼~! 先輩ね、夏休みにこっち戻って来るって! やばい、どうしよう! 今から楽しみでやばい!」
放課後の教室。
ケータイの画面をあたしに見せながらそうはしゃぐ亜希は、“やばい”とか“どうしよう”とか言いながら、ゆるゆるの顔で笑ってる。
ああもう、この子幸せオーラ全開だ。
夏休みって、まだ先なのに。
ケータイの画面とにらめっこして、返信の文章にでも頭を悩ませているのだろうか。
亜希は首を捻っては、うなり声をあげている。
それを見て、やれやれと思うのと同時に、佐伯先輩も苦労するなと思ったり。