体育館12:25~それぞれのみる景色~
そんな亜希は、相変わらずびっくりするくらいにモテている。
だけど、そんな彼女に下心ありきで近づく強者男子は、この学校には存在しない。
遠巻きに見てる人が大多数だ。
それもそのはず。
だって、こんなに幸せオーラ全開で、本当に幸せそうな顔で笑ってるんだから。
しかも、この子はいつだってナチュラルにノロケる。
迂闊に近づくと、そのあまーい空気にあてられて、もれなく瀕死だ。
……ってのは半分冗談で、半分はほんとのこと。
本人には自覚がないみたいだけど。
今までにも亜希に話しかけに来る男子はいくらかいたけど、幼なじみの七種海が転校してきて亜希とよく喋るようになってから、それが更に増えた。
周りの男子は七種に便乗して話しかけてるんだろうね。
そうでもしないと亜希に声すらかけらんないヘタレばっかだし。
もちろんその男子どもは、いわゆる“高嶺の花”と会話したいだけで、亜希を佐伯先輩から奪おうとなんてしていないから、あたしも安心してそれを見守っている。
でも、そのせいで亜希と2人きりで女子トークができる時間が減った。
それがなんだか悔しい。ムカつく。
男子ども爆ぜろ、なんて心の中で悪態をつくこともしばしばだ。