体育館12:25~それぞれのみる景色~

 ……佐伯先輩。


 あたしは佐伯先輩より長く、亜希と一緒にいます。


 今まで夏休みに誰より先に一緒に遊ぶ計画を立てていたのは、いつだってあたしだったんです。


 それなのに今、亜希はあたしに見向きもせず、ここにいない遠く離れたところにいる先輩だけを想って、来たる夏休みのことで想像を膨らませています。


 正直、悔しいです。嫉妬してます。


 亜希がとられたみたいで。


 でも、あたしは何も文句を言うつもりはありません。


 たくさん涙を零した亜希が、今こうして笑って幸せなことが、あたしも嬉しいから。


 佐伯先輩。


 あたしは、亜希のことが大好きです。


 だから、大事にしてください。


 泣かせないでください。


 あ、でも、嬉し涙ならオッケーです。


 そして、たまにはあたしにも亜希を貸してくださいね。


 2人が幸せなことを願っているので、亜希に近づく余計な虫の心配は、不必要ですよ。


 あたしがぶっ潰すんで、安心してくださいね。


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