体育館12:25~それぞれのみる景色~
ねえ、佐伯先輩。
少しだけ、訂正させてください。
やっぱりあたし、『たまに』くらいじゃ、時間足りないかもしれないです。
もっともっと亜希と一緒にいて、近くで笑っていたいと思うから。
卒業後、きっとあたしと亜希は別々の道に進むんだと思います。
友達って関係は切れなくても、今までみたいにそばにいることはたぶんできません。
あたしより長い時間を過ごすのは、これから先の未来、佐伯先輩なんだと思います。
今は離れたところにいても、いずれ一緒になるんだろうって確信があります。
だから……。
「夏休みも、それが終わってからも、卒業しても。いつだって会えるよ。それで、遊ぼうね」
千夏と純子、それから七種も誘ってさ。
そう言えば亜希は嬉しそうに微笑んで、言った。
「離れる未来なんて、想像できないね」
うん、あたしも同じ気持ちだよ。
ふたりで眺めた教室からの夕焼け。
身体はオレンジ色に染められた。
先の未来を、初めて想像した日。
【end】