今さら恋なんて…
会社を軌道に乗せるのに、きっと何年も掛かっただろうから…恋愛にかまけているヒマはなかったんだろう…。
「…ホントにつーちゃん、シゲのこと知らなかったんだね」
マスターはちょっと苦笑いを浮かべて、そう呟く。
「…う、うん…」
「んまぁ、“社長だって聞いて飛びついてくるような女とは付き合いたくない”って、シゲは言ってるから…そういうところ突っ込んでこないつーちゃんが余計に気に入ったのかもね」
「…じゃ、じゃぁ…マスターに聞いたこと、黙っておいた方がいいのかな…」
ぼそぼそと呟いたあたしに、マスターは、ははーん、と呟いて、
「つーちゃん。シゲのこと、ようやく気になってきたんだ」
って、ニヤニヤと笑いながら訊いてきた。
「そ、そんなことない」
「えー?今までこんなこと訊いたことなかったじゃん。もうシゲと絡み出して4年くらいになるよ?」
「……」
あたしは何も言い返せなくて、黙り込む。