今さら恋なんて…
「シゲ。お前、ちゃんと仕事してんのかよ」
「してるよ。なぁ?つー」
「……」
シゲハルにそう話を振られ、あたしは微かに頷いて見せた。
「へぇ。つーちゃん、シゲが仕事してるところ、見たんだ」
「うん…」
「商談してて…“何かあそこにいい女居るなー”って思って見たら…つーだった」
「それで商談そっちのけでつーちゃんばっかり見てたんだろ?」
マスターはシゲハルの前に“アイス・ブレーカー”を置くと、そう訊く。
「ご明察。今日は確認作業だけだったしな」
シゲハルはそう言って笑うと、“アイス・ブレーカー”を飲んだ。
「お前、マジで社長失格。とっとと若者に会社明け渡せ」
「俺だってそうしたいよ。まだ俺が居ないと、あいつ等全然ダメだから、引退出来ないだけだ」
「よく言うよ、まったく」
マスターはため息を吐いたが、
「…引退、ってまだシゲハル、40じゃん」
って、あたしは呆れてそう呟いた。