今さら恋なんて…
「…きったねぇなぁ…」
マスターはこれ以上ないくらいに嫌な顔をすると、おしぼりをシゲハルに渡し、カウンターを台拭きで拭いてくれる。
「…汚いなぁ…」
シゲハルの隣で、あたしも眉根を寄せてそう呟く。
「お、お前が変なこと言うからだろ!?」
シゲハルは顔を真っ赤にしながら、そうまくし立てた。
「……そりゃそうだけど…」
「…ったく…どういう風の吹き回しなんだよ…」
シゲハルは口元やスーツを拭いたおしぼりをカウンターに投げると、ぶつぶつと文句を言う。
「だって…」
「だって、何だよ」
「…ここじゃ話出来ない」