今さら恋なんて…
sept ~恋人の時間~
「お疲れ様でしたー」
「お先に失礼します」
帰って行くスタッフ達を横目に、あたしは1人、迷っていた。
今日はバーに行くべきか…行かざるべきか…。
相変わらずシゲハルの連絡先知らないし…やっぱりからかわれただけなのかな、あたし…。
…キスなんかするんじゃなかったかも…。
はふー、っとため息を吐いたあたしは、帰ろうと決意して店の出口に向かう。
「……」
まだ明るい店の中から外を見ると、向かいの歩道で、ほんのりと灯る赤い光が見えた。
タバコ…の火。
ぽっ、と強く光った光は、すぅっと消えそうに弱くなって…。
「……」
店を出たあたしは、思わずその場に立ち尽くした。
そのタバコを吸っていたのは…スーツに身を包んだシゲハルだったのだ…。