今さら恋なんて…
neuf ~取り戻せない時間~
“それ”がやってきたのは…ようやくお店が軌道に乗り始めた頃だった…。
「店長。電話鳴ってましたよ」
休憩室から戻ってきたアシスタントからそう報告される。
「え?ありがと」
ちょうど手が空いた時だったので、休憩室に行って、ケータイを見てみる。
「……」
不在着信に表示されていたのは、知らない番号。
「……」
この番号…また…だ。
「またですか?」
あたしの顔色で事態を飲み込んだのか、央輔はそう訊いた。
「うん。…おーちゃん」
「はい?」
「掛けてみてよ」
あたしはケータイを央輔に差し出した。
「い、嫌ですよ。店長の元彼とかだったらどうするんですか。下手な揉め事起こしたくないですよ、俺」
央輔はくわえタバコで嫌そうにそう呟いた。
「…そんな揉める様な別れ方した男居ないし…」
「そう思ってるのは店長だけかもしれないじゃないですか…」
「……」