今さら恋なんて…
deux ~モテ男、来店~
チリン
来店を知らせるベルの音に合わせて、
「いらっしゃいませ」
純香と同じレセプションの莉衣(リイ)が黄色い声を上げた。
「……」
現金だなぁ、あいつも…。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
いつでも冷静な純香がやってきた青年をソファーへ促した。
あたしはカラーの薬剤をお客様の髪に塗りながら、その様子を垣間見る。
約束の時間通りにやってきた彼は、ソファーに腰掛け、カルテに記入をしていた。
…んまぁ、こんな時でもピンとした背筋。
それに、綺麗なペンの持ち方。
常にお客様の目に触れるフロント係だから色々丁寧なのかな…。