今さら恋なんて…
cinq ~策に溺れる~
「…ん」
何だか温かくて、あたしはもぞもぞと寝返りを打つ。
すると、頬に硬い感触を感じ、目を開けた。
「……」
ピンク…の布に…ボタン…?
あたしは手を伸ばしてそのピンクの布に触れる。
それ、は…規則正しく上下運動を繰り返してて…
「……」
…ってか、これって…。
「…りゅ、龍哉…」
思いっきり下敷きにしていたそれ、は…黒いジャケットを着たまま安らかな寝息を立てる龍哉だった…。
しかも、あたしの右手は、龍哉のジャケットを未だに掴んでいて…これがあったから龍哉帰れなかったんだ、って瞬時に思った…。
「…じ、時間…」
龍哉が今日仕事かは知らない。
遅刻させては申し訳ない、とあたしは時計を慌てて確認する。
ベッドサイドの時計は、7時ちょっと過ぎを指していた…。
7時、で…セーフなの?アウトなの?
分かんない。