今さら恋なんて…
「……」
龍哉は苦笑いを浮かべる。
「ウチのスタイリストなんて…“店長は毎日誰かに告白されて幸せですね”なんて言うし…こっちの苦労も考えろ、っつーの」
「毎日…されてるんですか?」
「んなわけないじゃん。話が飛躍してるだけだよ」
「…ですよね」
「そうだよ。…ったく」
あたしはチェアーから立ち上がると、龍哉の前に回った。
柔らかい髪を指で挟んで、前髪を作っていく。
「……」
自然に目を閉じ、おとなしくなった龍哉は…何だか作り物みたいだ。
カットされた短い髪が、綺麗な曲線を描く頬を掠めてクロスに落ちていく。
「……」