今さら恋なんて…
「今度カラーしに来なよ。誰にも文句言わせないくらいいい男にしてあげる。…フロントしてるくらいなんだから、英語話せるんでしょ?」
あたしが言わんとすることが伝わったようで、龍哉は一瞬、口を閉ざした後、
「……まぁ、話せますけど…」
って、口籠もる。
「けど?」
「…まぁ、“いい男”にしてくれるなら文句ないです…」
「今以上にいい男になったら…モテてモテて仕方なくなるかもよ?」
「…どうなんでしょうね。人に好かれることは悪いことだとは思いませんけど…」
「じゃぁ、決定だね。いやぁ、美容師冥利に尽きるわ、こりゃ」
「…楽しそうですね、司さん」
「楽しいよ。スタッフの間では“美男美女製造機”って呼ばれてるから、あたし」
「…へぇ…」
「まぁ、あたしが楽しんでるんだけどね」