今さら恋なんて…



「いいじゃないですか。仕事が楽しいことはいいことですよ」


「そうよ。お客様だって“新しい自分”を発見出来るんだし…」


「それは魅力的ですね。どうしても自分の好みに偏ってしまうでしょうから…」


「そうよー。さて、こんな感じでどう?」

あたしはシザーケースにコームとシザーを戻すと、クロスに付いた髪を簡単に払いながら、龍哉に訊いた。


「……何か全然雰囲気変わりましたね…自分じゃないみたいだ」

鏡の中をじっと見つめた龍哉は、首を左右に動かしながらそう呟いた。


「そうでしょー?せっかく綺麗な目してるんだから、表に出してあげなきゃ。頭の形も綺麗だから、こういう方が似合うわよ」

あたしはチェアーを回して、合わせ鏡で髪型を見せながらそう呟く。




< 39 / 479 >

この作品をシェア

pagetop