今さら恋なんて…
「ありがとうございます。司さん」
あたしを見上げた龍哉は、そう言って笑った。
自分の手でイケメン度を上げておきながら、あたしは思わずにやけてしまった。
…今日のあたしもなかなかいい仕事が出来たみたいだ。
「じゃぁ、一度流すね。…初花」
シャンプーをするためにあたしの後ろに控えていた初花を呼び、龍哉を案内してもらう。
「…店長、いつもながら…グッジョブです」
床を掃きに来たアシスタントの真未(サナミ)がニヤニヤしながら親指を立てる。
「イケメンだー。すげーイケメンだー」
クロスを片付けながらぼーっと呟くアシスタントの岳(ガク)。
…アダ名はもちろん“ガッちゃん”だ。
岳もベビーフェイスのイケメンで…モテるはずなのに…。
「ガッちゃんも負けてないよ?」
あたしは服に付いた髪を軽く払いながらそう呟く。
「そうですか?…店長に言われると嬉しいですー」
岳はニコニコ笑いながらそう言うと、その場を離れていった…。