今さら恋なんて…

cinq ~オーセンテイック・バー~




「…あ、はい。そうです。では、お願いします」

あたしが電話を切った時、央輔が休憩室に入ってきた。


「…片付け終わった?」


鏡を覗き込んでグロスを塗りながら訊くと、

「はい。…どこか行くんですか?」

って、化粧直しで使った化粧品が転がってるテーブルを指さす央輔から返事が返ってくる。


あたしは普段帰る時に化粧直しなんかしないから気になったんだろう。


「うん。飲みに行くんだ。シーフォートに」


そう。今日は龍哉と飲みに行く日だ。


さっきの電話はタクシーに迎車を頼むためのものだったのである。





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