今さら恋なんて…
「へぇ。いいですね。…髪はセットしなくていいですか?」
「うーん。ドレスコードもそんなに厳しくないって言ってたから平気だと思う」
あたしはそう言いながら、伸びた黒髪に指を通した。
“作業服とかでなければ、断られることはないですよ”って龍哉は言ってたし…。
セットしなくても、あとで綺麗に梳かせば平気だろう。
「そうですか」
「うん。あたしタクシー待ってるから、もうみんな帰しちゃっていいよ」
「分かりました」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
央輔は律儀にお辞儀をした後、休憩室を出て行った。
その後は、わらわらと、
「お先に失礼します」
「お疲れ様でした-」
って声を聞きながら、あたしはひらひらと手を振って答えていた。