クールな彼と放課後の恋
日向が、洗い物をしながら私を見た。




「え、…っと・・・ちょっとジュース買ってくる…」

「え?どこに?」

「そこのコンビニ!」


私はそう言い残すと、家を飛び出した。




バイト初日の稲瀬を、こんな長時間働かせるなんて…

ちゃんとしたところなのかな?

マジで心配になってきた…


でも…





駅前にやって来た私は、数メートル先にある稲瀬のバイト先のピザ屋を、じーっと見つめていた。



これって、ストーカーじゃない?

何も考えないで飛び出してきちゃったけど、私めちゃめちゃイタイ子…



…帰ろう。



ピザ屋に背を向け信号を渡ろうとすると、ちょうど赤になり立ち止まる…


ちえ。

この信号長いんだよな…



信号を待ちながら、何気なく振り返ると…







ピザ屋から、稲瀬と同じバイトの子らしき女が出てきた!

しかも、楽しそうに会話してる…

しかもしかも!




こ、こっちに来るよっ




私はその場であたふたして、どうしようと考えた結果…

見知らぬ他人に成り済ますことにした。



そばにいたサラリーマンのおじさんに近より、さもおじさんと知り合いのように成り済ます。


早く信号変われー

お願いしますっ!





「藤川?」



ガーン!



私の成り済まし演技は、虚しくも数秒で稲瀬にバレた。

稲瀬は、信号待ちをした直後に私に気付き、声をかけてきたみたいだ。

隣には、ピザ屋から一緒に出てきた子の姿も…




「どうした?こんなとこで何やってんの?」

「えー…、と…あの~…」


どうしよう…




「急に具合悪くなっちゃって…薬買いに…」

「え…具合って?熱出たのか?」

「…ひっ!」


稲瀬は私のおでこを、手で触ってくる。
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