クールな彼と放課後の恋
「ち、違うよ!ちょっと頭痛くって…でも大丈夫!いつもの偏頭痛だから」

「…でも」

「駅の向こう側のドラッグストアなら、遅くまでやってるよ~」




稲瀬の隣にいた子が、そう言って駅の方を指差した。


さっき見たときは、同い年くらいに見えたけど…

この人…よく見ると歳上だよね?

多分、大学生くらい?




「バイトリーダーの斉藤さんだよ。今日色々教わったんだ」


リーダー?


稲瀬が、その女の人を私に紹介してくる。




「リーダーの斉藤です♪よろしくね!あ、もしかしてこの子がさっき話してた、一緒に住んでる子?」


え?



「そうです。カリスマ主婦の藤川」

「はい?」


稲瀬は、私を指差して言う。




「やっぱり~!藤川さんごめんね!夕方来るはずだった人が、体調悪くなって休みになっちゃったから、急遽稲瀬くんに入ってもらったの。稲瀬くん、今日初日なのにすごい仕事できるからさ♪」


…そうだったのか…

私はてっきり、新人の稲瀬がしごかれまくってんのかと…




「早くドラッグストア行って、薬買ってきな~藤川さん、お大事にね!稲瀬くんは、また明日~」

「はい!ありがとうございます…」

「お疲れ様でした」


斉藤さんは、元気に手を振って帰っていった。





「バイトリーダーって感じだよな、あの人…サバサバしてて、てきぱきしてて」

「…うん。いい人だね」

「それより薬買いに行くぞ。…で、帰って薬飲んで寝ろよ」

「…え、あーうん…はい」


ここまでくると、頭痛は仮病だなんて言えなくなっちゃった…

私は罪悪感を覚えながら、稲瀬とドラッグストアに薬を買いに行った。

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