クールな彼と放課後の恋
私はその男子を引っ張って、無理矢理隣同士の席に座った。




「頭上にあるレバーをひいてください~」


係員のお姉さんのそんな声が聞こえてきて、私はレバーを引いてジェットコースターが動くのを待った。



プルルルルル…


「まもなく発射しまーす」



ジェットコースターが動く直前…一瞬後ろを振り返ってみた…

一番後ろの席に、稲瀬と愛美ちゃんが座っているのが見える。

胸が痛かった…


せっかく誘ってくれた稲瀬から、離れたのは自分なのに…

本当バカみたい。


稲瀬から手を離さなければ、今頃は稲瀬が隣にいたのに…


ちょっと怖い女子に言われたからって…

おとなしく従うことなんてなかった。





ガコン…


ゆっくりと動き始めるジェットコースター。


でも、私は上の空。





愛美ちゃんとなんて…

学校も違ければ、住んでる場所だって遠い…

今日が終われば、もう会うことなんてないのに…

なんで私は…

そんな子の協力なんてしてるんだろう…




私だって、

稲瀬が好きなのに…







ゴゴゴゴゴゴゴゴっ…!




「きゃーーーーーーーーっ!」




私の乗っているジェットコースターは、急に落下し始める。


絶叫マシンを楽しみたい気持ちよりも、稲瀬のことを考えてしまい…全然楽しめなかった…

今はこれに集中しなきゃ!と思った時には、もうジェットコースターは止まっていた。





がやがや


ジェットコースターから降りると、少しフラフラしてしまう。



何がなんだか、全然わかんなかったな。

ただ落下したり、振り回されてたりしてただけだったような…

どっちにしろ、楽しくも怖くもなかった…






「ちっと便所~」

「俺も」


稲瀬以外の男子たちが、そう言ってジェットコースター乗り場の近くにあったトイレへ…
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