クールな彼と放課後の恋
「陽葵ちゃんトイレ平気?」


香穂ちゃんが、私に近づいてくる。




「うん大丈夫!香穂ちゃんは?」

「私も大丈夫」


香穂ちゃんの顔を見た途端、沈んでいた心が少し晴れた。




「アハハ♪」




少し離れたところで、稲瀬と愛美ちゃんが2人で話しているのが見える。

愛美ちゃんの友達はトイレなのか、その場にはいなかった。


稲瀬と話せて、楽しそうな愛美ちゃん…

私も…あんなふうに笑いたかったのにな…





「ジェットコースター楽しかったね!」

「……うん!室内だけど、結構速くて迫力が・・・ってごめんね。なんか気を使わせちゃって…」


香穂ちゃんが、私に気を使ってるのがわかる…


最低だ。

唯一心を許せる友達に、こんな想いさせるなんて…





「いいの。そんなこと全然気にしてないよ。私だって、今の陽葵ちゃんの立場なら、同じこと思うもん」

「香穂ちゃん…」


泣きそう。

私は香穂ちゃんに「ありがとう」と小声で言い、腕にひしっとしがみついた。





「ひ、陽葵ちゃん!前前っ」

「え…?」


すると急に香穂ちゃんが焦り始め、ふと前を見ると…





目の前には、稲瀬が…!

無表情で少し怖い顔をして、私を見下ろしていた。






「…ちょっとこいつ借りる」

「え!」

「うん!どうぞどうぞ!!」


香穂ちゃんが、私をぐいぐい押して稲瀬に近づける。


少し離れたところにいる愛美ちゃんが視界に入ってきて、私を睨んでいるのが見えた…



怒ってる…

怖いよ。


でも、またここで稲瀬から離れたら、後悔することになるのに…





「愛美…ちょっと来て」


!!!


今度は、愛美ちゃんを手招きする稲瀬。


一体なにを考えてるの…?
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