クールな彼と放課後の恋
「はいは~い」


さっきまでの怖い顔から、ニコニコ顔に変わった愛美ちゃんは、小走りで稲瀬に近づいた。

そして稲瀬の腕にしがみつき、まるで稲瀬の彼女のみたいな表情をした



胸がずきずきする…

こんなの…見たくないよ…


我慢出来ず、稲瀬と愛美ちゃんから目を反らすと…




「…愛美、お前バレバレなんだよ。その二重人格いまだに直ってねんだな」




稲瀬は愛美ちゃんに、冷たい口調で言った。




「な、なに言ってんの…」


思いもよらぬ稲瀬からの言葉に、動揺する愛美ちゃん。




「お前と別れたのは、お互い性格が合わなかったつーのもあるけど…それ以前に、お前のその性格の悪さに気づいたからだから」

「…!」


稲瀬の言葉は、愛美ちゃんの胸にグサッと突き刺さっているみたいだ。




「…ま、別にその性格をお前が直そうが直さまいが、俺にはどうでもいいことだけど…でも」

「?」

「藤川絡みでお前がなんかやってんなら、俺もさすがに本気でキレるよ」

「~~~っっ!」


こ、こわ!


稲瀬はそう言って、ものすごく怖い顔をした。

それは愛美ちゃんがさっきまでしていた怖い顔なんかとは、比べ物にならないくらいの怖さで…

稲瀬の言葉がすごく嬉しいのに、それがすぐには頭に入って来なかった…


愛美ちゃんは稲瀬の腕からそっと手を離し、逃げるように女子トイレへ走って行ってしまった。




なんか、魂抜けたような顔してたな…

よっぽどの屈辱だったみたい…




ぎゅ


「あ…」


すると、私の手を引き歩き始める稲瀬。


どこに行くの…?って…なんとなく聞けないな…



私は戸惑いながらも振り返り、香穂ちゃんの顔を見ると…

香穂ちゃんは、笑顔で私を見送ってくれていた。


私は香穂ちゃんに手を振り、稲瀬が私の掴んでいる手首から徐々に下に下りてきて…

私の手を握りしめてきたことに気がついた。




私はその手を、ぎゅっと握り返した…









「わぁ…」
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